娘と息子とちいさいお庭

子どものことと暮らしについて記します

なんか知らない間にLEGO(レゴ)がすごい会社になっていた - 「レゴ 競争にも模倣にも負けない世界一ブランドの育て方」を読みました

会議中にレゴを見せびらかす上司

ある日、定例のチーム会議(Web)に参加すると、そこには何やら画面の前でラジコンのようなものを見せびらかしている上司(オランダ人)がいました。

「…何やってんだこの上司は」

おそらく私以外のチームメイト(全員外国人)も同じことを考えたでしょう。いや、普段の上司の性格からして、特段びっくりすることもなく「ああまたなんか関係ないことやってんな」くらいしか思わなかったかもしれません。私も半分そんな感じでした。

で、そのラジコンのようなものをよく見てみるとそれはレゴでできたダンプカーでした。

「すごいだろこれ。スマホのアプリでこうやって動くんだよ」といろいろな操作をし始めます。私含めチームメイトもおもしろくなってあれやこれや質問したりしているうちに20分程度経ってしまいました。なんて幸せな職場(チーム)なんでしょう。

子どもが生まれ成長し、再びレゴに触れる

もちろん私も子どものころはレゴの存在は知っていました。ただこうした創作系は大の苦手で、バラバラにある多数のブロックを目の前に置かれ「さあなんでも自由につくってください」みたいなイメージを当時勝手に持っていました。自宅にレゴはなく、特段ほしいとも思わないまま大人になりました。

で、大人になり息子が生まれ、おもちゃ売り場やYoutubeで再びレゴを目にするようになります。そこでの印象は

「あれ、レゴってこんなこともやってるんだ?おもしろそう(ふつうにほしい)」

でした。スターウォーズといった映画とコラボしてたり、ランボルギーニが作れたり、独自のコンテンツ(レゴ ニンジャゴー)があったりで、子どものころに持っていたレゴのイメージとはそれはそれはかけ離れた光景でした。

この光景を目にし、一気にレゴに惹かれるようになりました(だがレゴを買ったことはまだない)。しかも会社としてめちゃめちゃ儲かっている。そして、「私が知らない間にレゴに何があったんだ?」と疑問を持つようになります。

ちなみに、2020年は売上高が約7,560億円、営業利益が2,230億円でした。営業利益率29%ははじめ目を疑いました。やばすぎ。

(参考:他社の営業利益率。業種によって水準は様々なのであくまでも参考程度です)

Google:だいたい20%

Apple:だいたい25%

トヨタ:だいたい7-8%

日本の製造業平均:4%

タカラトミー:5-7%

「レゴ 競争にも模倣にも負けない世界一ブランドの育て方」を読む

で、こちらの本を読んでみてだいたいの流れがわかりました。レゴ社は非上場企業で、創業者一族による一族経営です(後述する通り、低迷期に一族以外の人間が実質的な経営を行い立て直しをしています)。

創業、ヒット、拡大

レゴの歴史は、家具職人だったオーレ・キアクが1934年に玩具メーカーの名前をレゴ(LEGO)とするところからスタートします。第二次世界大戦後の1949年にプラスチック製ブロックを完成させ、1958年にクラッチ構造という現在の形のブロックが出来上がりました(なんとこの当時のブロックは、現代のブロックにもかっちりとはまるようです。)。ブロックの強度と遊びの自由度の高さから、レゴブロックは欧州を中心にヒットします。バッテリー内臓の汽車型「レゴトレイン」が大ヒットし、その後も様々なプレイテーマを展開し子どもたちの間に浸透します。

初の赤字転落と外部からの招聘

しかし、1980年代後半になると状況が変わりはじめます。まず、各国で取得した特許が80年代になりどんどん切れていきました。これにより、競合他社が同じデザインでより安価な類似品を製造・販売できるようになります。

また、テレビゲームが登場しファミコンやプレステが子どもたちの遊び場にどんどん侵入し始めます。ファミリーコンピュータが1983年、ゲームボーイが1989年、プレイステーションが1994年に登場するなど、子どもたちの遊び時間(可処分時間)がゲームに奪われ始めます。

こうした状況下でも、古くからの体質(デザイナーは聖域等)や販路の変化(各小売店⇒大型店舗)への抜本的な対応が間に合わず、ついには1998年12月期に創業以来初めての赤字に転落します。この年、創業家のケル・キアクは経営立て直しのため外部から新しい指導者(ポール・プローマン)を招聘することを発表します。

脱ブロックの取り組み - 成功と失敗

プローマンはブロックそれ自体がすでにコモディティ化しているとし、脱ブロックの方針を鮮明にしました。テレビ番組やテレビゲームへのコンテンツ提供、アパレルや時計といった様々な分野へのライセンスビジネスの検討、そして直営店の増設やレゴランドの世界展開を進めます。

「レゴ スターウォーズ」もこの時誕生します。映画続編の公開に合わせ、レゴ版のスターウォーズの開発を行いました。そのほか、レゴデュプロの開発中止や大規模な人員削減など、経営立て直しのために様々な施策が進められます。

スターウォーズ続編公開の影響で過去最大の営業利益を記録しますが、映画公開年以外の年には売り上げが大きく落ち込み、2年後には再びの赤字転落。そして、急進的な事業の多角化により自己資本比率が急激に落ち込み(26.7%⇒5.9%)、創業以来最大の危機を迎えます。

若き指導者による立て直しで高利益体質に

プローマンによる改革は失敗し、ここで新たに当時35歳のクヌッドストープを指導者に抜擢します。まず全社員の3分の1にあたる1,200人を人員整理し、採算の取れない事業からの撤退や譲渡を推し進めます。

一方で、レゴの存在意義・自分たちが戦うべき場所を再定義します。それが「ブロックの開発と製造」でした。中核事業であるブロックの価値を再確認し、製品開発プロセスを見直し、またユーザーとの対話を増やすことでヒット作品を生み出す仕組みを作り上げました。

下記のサイトLEGO-CUUSOOでは、ユーザー自分のレゴのアイデアを投稿できます。他のユーザーからの評価が一定数に達した場合、レゴ社が製品化を正式に検討を始めます。

cuusoo.com

このサイトは、レゴ社幹部が日本人起業家とアメリカで出会い、彼が創業した「空想生活」がベースとなり誕生したサイトです。このサイトを通じて様々な製品が誕生しており、例えば潜水調査船の「しんかい」のレゴが日本人ユーザーからの投稿によって誕生した例もあります。ちなみにこの「しんかい」は販売停止によりプレミア化しており、軽く10万円以上の価格で取引されています。

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また、レゴ アーキテクチャーやレゴ マインクラフトシリーズもユーザーとの対話によって誕生したシリーズです。

こうした若き指導者の策が功を奏し、レゴ社は危機的な状況を脱し高収益体質の企業に生まれ変わります。非上場企業ですが毎年の決算内容がAnnual Reportに掲載されていましたので、下のようにまとめてみました。2000年代前半まで落ち込み具合と、2000年代後半からの快進撃が一目瞭然ですね。売上高は基本的に右肩上がり、営業利益率は高水準を維持…すさまじいの一言です。

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灰色の折れ線がオレンジ色(0%)を下回っている年は赤字

最後に、「ああこれいいなあ」って思った内容を引用します。再建を果たしたクヌッドストープ氏の言葉です。

「私はよく、これをピアノと楽譜の関係に例えて表現しています。ピアノは、もちろんそれ単体で楽しめますし、楽譜がなくても弾くことはできます。けれど、楽譜があればまた違った楽しみ方ができますよね。自分のしらなかったさまざまな世界を知り、その世界観に浸ることができる。ピアノの楽しみ方が広がるわけです」「レゴも同じ考え方に立っています。…いろいろな種類の"楽譜"を用意することで、子供たちの楽しみ方を広げている。…一度作り方を覚えてしまえば、後は自分の世界観を自由に作り上げることができます。」

下の娘がもう少し大きくなって誤飲の心配がなくなったら、子どもたちとレゴで遊びたいと思いました。